夜間多尿とは
寝ている間に尿意をもよおし、眼が覚めてしまうなど夜間の尿量が多くなることを夜間多尿といいます。
高齢者にとってポピュラーな症状で、何度も起きるようになると、きちんと休んだ気がしないなど、トイレに関する悩みで生活の質(QOL)を大きく下げることになってしまいます。
本人や介護している人がとくに困らない程度であれば、治療の必要もないことが多いのですが、夜間多尿にはさまざまな原因があり、中には何らかの病気が複数からみあって症状をおこしていることもありますので、一度検査などで原因をはっきりさせ、適切な治療やケアを行う必要があります。このような症状にお困りの方は当クリニックまでご相談ください。
原因と多尿のおこる仕組み
夜間多尿がおこる仕組みとしては、
- 昼夜を問わず尿量が増加している、または夜間だけ尿量が増加している
- 膀胱の筋肉が硬くなるなどのから容量が低下してしまった
- 睡眠障害から多尿や頻尿が引き起こされている
の3つが考えられます。この3つのどれかが原因というだけでなく、それぞれが相互に関係していることもあります。
直接の原因となるのは、前立腺肥大や膀胱機能の低下などが考えられますが、背景には単純に水分を摂りすぎている、脳血管障害、糖尿病などの内分泌障害、心不全など循環器系の病気、腎臓疾患などが関係していることもあります。
夜間多尿と腎臓疾患
腎臓は血液中の老廃物を濾過し尿にして排出するとともに、必要な水分は血中にもどしています。これを尿濃縮能といい、尿量を一定程度にとどめ、体の水分バランスを保つように働いています。
通常、睡眠中はこの尿濃縮能が強く働き尿量が減るのですが、腎臓の機能が低下すると、この機能も低下してむしろ尿量が増えてしまいます。高齢者の場合は腎臓に障害がなくても腎機能が衰え夜間頻尿が増えます。それ以外の人の場合は腎機能に何らかの障害があってこうした症状を呈することが多くあります。
また腎臓の代表的な機能の一つとして、身体の中のナトリウム量(塩分)を調節することがあります。健康な人は身体の余分なナトリウムを日中の排尿で十分排出できます。ところが腎機能が低下してくると、日中の尿だけではナトリウムを排出しきれず、夜間の尿量が増えてしまいます。これも夜間多尿の一つの原因です。
さらに、健康な人は、睡眠中は抗利尿ホルモンの働きで尿量が減るようにできているのですが、何らかの理由でこのホルモンの分泌量が減ると、睡眠中も日中と同様に尿がつくられてしまいます。
夜間多尿はこうしたメカニズムで起こることが多いため、減塩でナトリウム量を減らしたり、利尿薬で日中の尿量を増やしたりすることによって状態が改善することもあります。
腎臓は尿の排泄に重要な臓器となっております。尿量の変化などは腎臓疾患のサインとなっていることが多くあります。夜間の多尿や尿量の変化などに気付いた際は腎臓病専門医へご相談ください。